建築家の本来の役割りは、街とのつながりを意識し空間の新しい使い方を考えることだと思っています。なぜなら建築はその街が持つ文化や歴史、経済などのつながりの中でこそ成立するものだからです。なので、街から浮いて見えるほどキャッチ―なデザインや自分が作りたい物だけにこだわるといった姿勢は、建築家として違和感を覚えます。
今回も私は、街とのつながりと土地が持つポテンシャルを最大限に引き出すことに焦点を当てました。物件は表参道という東京を代表する街の、その中でも商いと住まいとが程よく混ざり合った最高のロケーションにあります。
外観は、建物全体が小さな『都市』のイメージです。大階段を降りた先には半地下となる空間が広がり、その上に架かるブリッジはまさに都市性の象徴となっています。また、建物の前を通る小径も他では見られない印象的なものへと仕上げました。ここに住まわれる方は都会的センスがあり豊富な空間経験のある方たちだと思うので、内観は細やかな仕掛けを様々な箇所に施しています。壁に埋め込み式のニッチや間接照明、足元から取り入れる外光など、今までにないほど盛り沢山です。
しかし、無駄をそぎ落としシンプルであることはこだわりとして一貫しています。長期的な視点で見たとき、この建物をきっかけに、街全体がより質の高いものになっていくといいですね。そうなりうる可能性は十分にあると思っています。
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