目まぐるしいスピードで姿を変えていく東京の中でも、六本木という場所は特別な場所と言えるでしょう。この街では数々の流行が生まれては、すぐに飽きられ消えていくことを繰り返しています。それがこの街の活力であり、魅力でもあります。
そのような中でも、10年、20年、30年経っても、時代の風雪に耐えうる持続可能な建築とはどうあるべきか。それは表層的な流行を追うのではなく、もっと本質的なことを追求する。これを具現化していくのが建築家の仕事ではないかと私は思います。
まずシンプルであること。飽きがこないためにはシンプルでなければならなりません。しかし、ただシンプルなだけでは個性がない。その個性として、特にこだわったのは中間領域です。中間領域は、屋外と室内をやわらかくつなぐ「空間」です。もともと日本の建築は西洋の建築と違い、縁側や畳部屋といった使い方次第で用途が変わる機能を持っていました。
室内にあるのにそよ風が通り抜ける共用廊下や一体となった土間とリビングなど、この中間領域を設けたことで、純和風の建物ではないのに、不思議とどこか懐かしさや落着きを感じてもらえるはずです。
また、住む人の発想や想像力をかきたてられる自由度の高い空間なので、他では味わえない、その人ならではの住む楽しみが得られると思います。
六本木という街はこの先も変わっていくかもしれませんが、ここにしかない価値がある限り、いつの時代であってもプライドを持って住んでもらえると確信しています。
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