モデリア/投資用収益物件の企画・開発/Modelia

Modelia Colors WAKAMATSUCHO 2016/10
概要 シェアハウス(22室)
所在地 東京都新宿区若松町
敷地面積 323.03平米
延床面積 760.04平米
竣工 2016年10月

コンバージョン×シェアハウス モデリア新プロジェクト開発ストーリー(前編)
なぜ新築ではないのか。なぜシェアハウスなのか。なぜそれをモデリアが手掛けるのか。
コンセプトを持ったデザイン性の高い賃貸マンションを数々手掛けてきたモデリアが初めて挑んだシェアハウス。
その誕生までの軌跡を追います。
コンバージョン×シェアハウス モデリア新プロジェクト開発ストーリー イメージ
インタビュー(写真右奥から):郷内 秀峰(プロデューサー)、佐々木 龍一(建築家)、奥村 梨枝子(建築家)、山脇 未来(企画担当)、米光 清史(運営管理)、
山田 哲郎(コピーライター)、相場 裕史(アートディレクター)、加藤 勇一(ウェブデザイナー)
建築家  佐々木 龍一/奥村 梨枝子 PHOTO

EPISODE1:オフィスだった物件との出会いとひらめき

始めは新築でマンションを建てるつもりだった
――この物件はもともとある会社のオフィスだったとのことですが?
郷内「当初はもとのオフィスの建物を取り壊して更地にしてから新築の賃貸マンションを建てるつもりで物件を見にいきました。しかし、この物件を見た時にピンときました。築20年と築年数もそれほど経ってなくキレイな状態で、外観のガラス張りの曲線もおもしろいなと。これは取り壊さずに建物を活かしたまま共同住宅にした方がいいのではないかって、企画者としての経験則からひらめいて計画を変更しました」

佐々木「私もオフィスであるより、住居施設の方がこの場所にふさわしいと敷地的な可能性を感じました」

時代が求める再生ビジネス
――確かに外観も印象的な作りのオフィスでした。最近、もともと倉庫だったり民家だったところを店舗にする事例も街でよく目にするようになりました。
郷内「近年建築コストが高騰してきています。しかも、建物を壊すと大量の燃やすことのできないゴミが発生して地球にもやさしくない。スクラップ&ビルドというのは時代の流れから、経済性と環境配慮の両面で課題があると捉えられるようになってきました。だから、その現代社会が持っている課題の解決とニーズに応える『再生ビジネス』をやっていこうと、モデリアの第一弾プロジェクトとしてスタートさせました。中古のマンションをリノベーションして再販したことは過去にもやってきています。でも、一棟丸ごとコンバージョンしてやろうというのが今回の趣旨です」
――リフォームやリノベーションはよく聞く言葉ですが、コンバージョンとは?
佐々木「リフォームやリノベーションは住居から住居、店舗から店舗といった用途はそのままに新しくすることで、コンバージョンというのは既存の躯体を活かして住居から店舗へなど用途を変更することを指します。最近は工事費が上がってきていますから、躯体を活かして再生していこうという機運が高まって、言葉としてもよく使われるようになっていますね」
奥村「いわゆる内装の変更のことではないです」
郷内「用途を変更するというのがポイントです。モデリアは住宅が専門ですからオフィスからオフィスではなく、オフィスから住居にするのがミッションになります」
最適解を導き出す3つの条件
――モデリアと言えば今まで数多くのマンションを手掛けてきたと思うのですが、今回はなぜシェアハウスだったのでしょうか?
郷内「まずオフィスから住居へコンバージョンする場合、単純に共同住宅とするにはクリアすべき法的制限が多すぎます。そうなるとコストが高くなり、経済的合理性がなくなってしまう。それがシェアハウスということなら、法的な扱いが変わるのでコストを抑えてコンバージョンが可能になるんですね。モデリアはただカッコいい建物を作るわけでもなく、収益のみを追求する建物も作りません。その土地が持つポテンシャルを最大限発揮する上で、周辺環境に合った『デザイン性』、住まうための『機能性』、確実な『収益性』といった3つのバランスを重視しています。今回は、その最適解がシェアハウスだったというわけです。初めからシェアハウスありきだったわけではないのです。こういった解の出し方ができるのがモデリアであり、実現できるのは、それを助けてくれる建築家のS.A.A.Oのお二人及びスタッフがいるからなんです」
「モノからコトのデザイン」へ
――建築家のお二人は今回のプロジェクトをどう位置づけていますか?
佐々木「もともとは欧米で部屋をルームシェアして住んでいるというのが最初だと思うんですけど、日本に入ってきてシェアハウスとなり、形が変化してきています。シェアというのは、例えば一枚のピザを分け合うみたいな“切り離して分ける”といったイメージがあると思いますが、今回のプロジェクトはいろいろなものが集まって積み重なるといった位置づけです」

奥村「私たちの考えるシェアハウスは、モノのデザインからコトのデザインに近いと思います。嗜好の近い人が集まり一体となることで、どんな化学変化が起きるかなと。そのコンバインの感じをデザインにも出せたらと意識しました」
建築家  佐々木 龍一/奥村 梨枝子 PHOTO

EPISODE2:コンバージョンは新築よりも難易度が高い

制約がコンバージョンをより難しくする
――では、実際に設計していくにあたって、新築とコンバージョンでは発想の仕方や技術的な違いはあるのでしょうか?
奥村「価値の作り方は同じですね。自分たちがどういう方向性に持って行きたいかといったことに関してはどちらも変わりません」 佐々木「ただ新築に比べるとコンバージョンの方が難易度は高いことが多いです」

―― 一般の人から見ると新築の方がゼロから作るので難しく、コンバージョンは元の建物がある分、労力は少なくてすむのかなと思ってしまったのですが。

奥村「既存があるということは、制約もあるわけですからその分、難しくなります」 佐々木「新築だったら自分の思う寸法を自らの考えで作っていけますが、既存のものはもうそこに建ってしまっているわけですから。建物内部の状態も開けてみるまでわからないってことも多々あります」
オフィス建設時の図面と実物の設計が違った
奥村「オフィス建設当時の図面と実際にあるものが違うということがありました。そうなると調査からやり直さないといけないという事態になってしまいました。合法的に、法律を守りながらの調整も必要になってきます」
郷内「全部壊して新築で建てた方がはるかに簡単でした。費やしている時間も過去の新築物件よりも長いですしね。でも、再生ビジネスを達成しようとする企画者、設計者、オーナーの目的と志しがあるわけです。だから難しくてもやっていこうと思えるんです。ハードルは高いほどやりがいがあります。それがモチベーションになっていますね」
後編へ続く
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